「コーヒー」を指定する時の注意事項まとめ
コーヒーは事前知識がないと、かなり難しい商品の一つです。
下記の商品はどの区分に属して、どういう表現をするのでしょうか
- 焙煎したコーヒー豆
- 焙煎していないコーヒー豆(生豆)
- 缶コーヒー
- ペットボトルのコーヒー
生豆→「なままめ」と読むらしいです。
基本的には30類でカバー
①30類「コーヒー」
30類「コーヒー」には、「焙煎後のコーヒー豆」、「インスタントコーヒー」、「ペットボトル等容器に入ったコーヒー」などが含まれます。
②30類「コーヒー豆」
そして注意したいことは、焙煎前のコーヒー豆は、30類「コーヒー」には含まれず、30類「コーヒー豆」に属するということです。農家で取れた摘みたてのコーヒー豆とか入るのかな。
ぱっと見、「コーヒー豆」って見たら焙煎した後の黒いコーヒー豆をイメージしますけど。違うんですね。
32類も必要に
「コーヒー」と「コーヒー飲料」と「コーヒー入り清涼飲料」
ここが最難関ですが、ペットボトルコーヒーなどは、コーヒー豆がどれくらい使われているかで「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」って飲み物の種類が異なるみたいです。
なんと、それに伴い「コーヒー」「コーヒー飲料」と「コーヒー入り清涼飲料」は別の区分になっています!!類似群コードも別!
コーヒー豆がどれくらい入っているかを「生豆換算」(なままめかんさん)という言葉で表します。
詳しくはこちらで「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約 」
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/010.pdf
内容量100 グラム中に生豆換算で、コーヒー豆を下記の量を使用したもの
「コーヒー」 5g以上
「コーヒー飲料」 2.5g以上5g未満
「コーヒー入り清涼飲料」 1g以上2.5g未満
③32類「コーヒー入り清涼飲料」
「コーヒー入り清涼飲料」は「清涼飲料」と同じ32類です。
つまり、生豆換算で
2.5g以上→30類「コーヒー、コーヒー飲料」
2.5g未満→32類「コーヒー入り清涼飲料」
ということです。
なので、クライアントに「今度ペットボトルのコーヒーの飲み物発売するんで、コーヒーの区分でよろしく!」って言われたときには、
ちゃんと「生豆換算で2.5g以下のもの販売しますか?」または「コーヒー入り清涼飲料販売しますか?」と聞かなければなりません!
正直「コーヒー飲料」と「コーヒー入り清涼飲料」は類似群コード異なるけど、ちゃんと争えば商品類似になりそうですけど。
まとめ
コーヒーの指定商品って 難しい。
【参考審決例】
「コーヒー飲料」と「コーヒー入り清涼飲料」は違うものだよ、という審決。
「商品の一般名称」は、本当に識別力ないのか?
通常、商品の一般名称は識別力がないといわれています。
しかし、近年そうとも限らない審決がちらほら出てきており、一概に判断できなくなってきています。
今回は、結合商標の中での、商品の一般名称について、4条1項11号での取り扱いを中心に見ていきましょう。
原則を見てみよう「4条1項11号の審査基準」
4条1項11号の審査基準には下記の通り記載されています。
6.結合商標の類否は、その結合の強弱の程度を考慮し、例えば、次のように判断するものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなときは、この限りでない。
(1)形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、 質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されてい ない商標と類似する。
ざっくり要約
つまり、商品の品質等は原則、そこを省略して類否判断しようねって記載されています。
疑問
では、「小僧」と「小僧寿し」は類似でOK?
「寿し」って思いっきり商品「寿司」の一般名称ですよね。
「小僧」と「小僧寿し」は非類似
最高裁平成 6年 (オ) 1102号
被上告人標章については、一般需要者が「小僧寿し」なる文字を見、あるいは「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」なる称呼を聞いたときには、本件商品の製造販売業者としての小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンを直ちに想起するものというべきである。そして、「小僧寿し」は、一般需要者によって一連のものとして称呼されるのが通常であるというのであるから、右によれば、遅くとも昭和五三年以降においては、「小僧寿し」「KOZOSUSHI」「KOZOSUSI」「KOZO ZUSHI」の各標章は、全体が不可分一体のものとして、「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」の称呼を生じ・・・・
ざっくり要約
持ち帰り寿司で有名な「小僧寿し」は、普通、一般需要者は「小僧寿し」って読むよね。だから、そういう取引事情を考慮すれば、「小僧」「小僧寿し」は非類似だよね。
という判決が出ました。
取引事情を考慮すれば、著名商標は識別力弱い部分があっても一連一体に判断することもあるようです。
疑問
じゃあ、「おつかれサワー」と「おつかれ」はどちらも有名でない場合は、類似ですよね?
「おつかれサワー」と「おつかれ」は非類似
不服2012-24640
・・・この「サワー」を含む低アルコールリキュールを扱う団体(日本洋酒酒造組合)においては、・・・誤飲防止や、一般消費者の適正な商品選択を保護し不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保することを目的とした自主基準を設けている。
その基準によれば、「商品名」について、「清涼飲料等との誤飲を防止するため、『果汁』の用語を使用するときは、例えば、『○○果汁のお酒』、『○○果汁のチューハイ』等のように酒類であることがめいりょうに分かる商品名に果汁の用語を使用する場合に限り行うことができる。この場合、当該商品名の表示は分離することなく一体になっていなければならない・・・」と規定するなど、本願指定商品を取り扱う業界において、商品名の表示方法について、一定の基準が作成され、注意が払われていることが見受けられる。
そのような実情を踏まえると、名称(商標)の一部に「サワー」等の酒類を表す語が含まれている場合においても、他の部分を含めた全体で「○○サワー」のように一体で使用されるのが通常であるといえる。
そうすると、本願商標は、その構成中の「サワー」の文字部分が、本願指定商品の普通名称を表すものであるとしても、上記の実情よりして、常に全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるものとみるのが相当であるから、その構成文字全体に相応して、「オツカレサワー」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものと判断するのが相当である。
ざっくり要約
酒業界の場合、名称の一部にサワー含まれる商品名は、「○○サワー」と使用することが普通ですよね。
なので、「サワー」つくものは一連一体で読みましょう。
そのため、「おつかれサワー」と「おつかれ」は非類似です。
という、審決例です。
疑問
では、業界内に、商品名の規則ない場合の
「ゲンコツコロッケ」と「ゲンコツ」は類似ですよね?
「ゲンコツコロッケ」と「ゲンコツ」は非類似
不服2014-24087
そして、本願商標の構成中の「ゲンコツ」の文字は、「げんこつのような形(又は大きさ)」として、形状を暗示させる場合があることは否定できないことから、「ゲンコツ」の文字部分は、識別力がないとまではいえないが、自他商品の識別標識として強力に機能するともいえないものである。
そうすると、本願商標は、「ゲンコツ」の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能するというよりも、その構成文字全体をもって、取引に資するものというのが相当である。
したがって、本願商標は、その構成文字全体で、一種の造語を表したものと認識、把握されるとみるのが自然であるから、その構成文字に相応して、「ゲンコツコロッケ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものといえる。
ざっくり要約
商品「コロッケ」において、商標「ゲンコツ」は、
識別力がないとまではいえないが、自他商品の識別標識として強力に機能するともいえないものである。
のようです。
この表現は逸品です。
図にすると下記のような感じです。
識別力ない
↑
この間(識別力ないとも言えないが、強力でもない)
↓
識別力強力に機能する
「識別力ない」というと、そもそも3条じゃない?引用商標も否定するの?となってしまうし、
「識別力強力にある」というと、「ゲンコツ」だけ抜き出して判断することになるから、4条1項11号該当になります。
そこで、3条でもないんだけど、「ゲンコツ」のみは抜き出して判断しない表現としての、
「識別力がないとまではいえないが、自他商品の識別標識として強力に機能するともいえないものである」
です。
この表現は、他の審決にもあります。
「radiant fluid foundation」と「RADIANT」
不服2014-10997
本願商標の構成中、「radiant」の文字部分は、「輝く、明るい、光り輝く」等の意味を有する英語であって、その指定商品中の化粧品の分野においては、肌について「輝きのある肌」、「輝くように明るい肌」のように表示する場合があることから、「radiant」の文字部分は、前記のような意味合いを想起させる場合があるものといえ、該文字部分は、自他商品の識別力がないとまではいえないとしても、自他商品の識別標識としての機能を強力に発揮するとはいえないものである。
まとめ
原則
商品の一般名称が入っていれば、その部分は識別力なし。
例外
取引事情を考慮。商品名入ってても一連一体に読む場合もある。
(例)
- 著名商標で需要者が既に一連一体に読んでいる場合
- 業界では商品名も一連一体に読むことが普通な場合
- 識別力がないとまではいえないが、自他商品の識別標識として強力に機能するともいえない場合
この他にも理由が色々出てくると思いますので、審決をチェックしていきたいと思います。
VBAであらゆる業務を自動化する
VBAを使えば、半分以下の時間で業務ができる
VBAはMicrosoft Office製品に組み込まれているプログラミング言語です。
Word、Excel、Outlookなどで使うことができます。
このVBAを駆使すれば、今の業務時間を大幅に短縮化することができます。
どんなことができるの?
VBAを使えば、以下のことが全て自動化できます。
- ファイルやフォルダを自動作成、移動
- 願書や意見書などの書誌的な部分を自動作成
- メール自動作成、自動送信
- 意見書などのよく使う文言自動挿入
- J-PlatPatとの連携
- 必要な審決例ガサッと取ってくる
- その他検索エンジンの連携
例えば、願書など書誌的な部分は、コピペなどのミスが発生しやすい部分なので最も自動化が生きてくる項目です。
また、書誌的な項目を自動化すると、「間違ってないかな」と気遣い作業が減るため、業務が非常に楽になります。
VBAはほとんどのアプリケーションと連携できるので、現在お使いのデータベースから情報を全て引っ張ってくることができます。
自動化機能は、一つ一つは10秒程度の短縮ですが、積み重なれば業務時間を半分くらいに短縮できます。
誰が作ればいいの?
基本的には、自分で作ることができます。
自分で作ることのメリット
- コストがかからない
- 改善が容易
プログラミングが全くの初心者であっても、数か月もあれば多くのことができるようになります。
どうやって学ぶの?
今は無料で誰でもプログラミングを学べます。
以下のサイトがオススメです。
動画で学ぶ場合
わからない項目を調べる場合
基本はグーグルで全て調べられます。
いつプログラミングやるの?
私は、業務時間または家に帰って作成しています。
プログラミングは、落ち着いてまとまった時間集中しないと作成できませんので、できるだけ、問い合わせが少ない時間にすることがよいと思います。
むすび
今まで、時間がかかっていた作業がワンクリックでできたときは、かなり感動します。
VBAの修得は、必ず業務効率を上げますので超お勧めです。
何故4条1項11号の拒絶理由には番号しか書いていないの?
一般的な4条1項11号の拒絶理由
理 由
この商標登録出願に係る商標は~~ごにょごにょ~~第4条第1項第11号に該当します。
記
区 分 引用No
第25類 1
引用No 引用商標一覧
1 登録第○○○○○号
何故4条1項11号の拒絶理由には引用商標の番号しか書いていないの?
この拒絶理由を、最初見た時、謎でした。
「登録番号しか書いてないの!?特許だと理由書いてくれてるのに、超不親切じゃん!」
そこで調べると、以下の通達にそのことが書いていました。
40.02 商標法第4条第1項第11号に係る拒絶理由の開示
商標法第4条第1項第11号に係る拒絶理由の引用商標の表示については、以下の方針によることとする。
1. 商標法第4条第1項第11号に係る拒絶理由通知において、既に、商標 公報に掲載され出願公開されている商標又は登録時の商標公報に掲載され ている商標を拒絶理由に引用する場合には、原則として、引用商標を特定する出願番号又は登録番号のみを表示することとし、「商標」及び「指定商品又は指定役務」は記載しないこととする。
引用:http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyoubin/40_02.pdf
「商標」及び「指定商品又は指定役務」は記載しないこととする。
そんなにはっきり書かなくても・・・
これ調べるの若干面倒なんですよね。この引用商標を調べる手間は、1回1回は数分で済みますが、1年間の全ての弁理士の手間を考えると結構ありそうです。
引用商標のリンク貼ってくれたらうれしいなと日々思っています。
(J-PlatPatではリンク切れますが・・・)
番号しか書かない理由
皆様も感じていると思いますが、おそらく審査の効率化ですね。
YES/NOで審査が終わるので楽だと思います。
審査基準は絶対か
審査基準は絶対じゃない
審査基準は絶対のものじゃないです。極端な話、審査基準をねじまげて結論出すこともOKです。
法律ねじまげるのはダメだけど。
OK「4条1項11号の審査基準と異なる解釈だが、この場合は、拒絶で。」
NG「4条1項11号に該当するが、この場合は登録で。」
審査官も人間だし、間違えることもありますよね。しかも、公開されてない謎の審査プラクティス(手法)に基づいてる可能性もあるし、仲良くやっていくしかないですね。
「この意見書むかつくわ~」と思われたら、意地でも拒絶にされる可能性もありますよね。おそろしや。
「ライオン」と「テイオン」
よく外観類似の例では「ライオン」と「テイオン」は似ているよって、なってますが(私も顧客に外観類似説明するときによく使ってます)、個人的には本当に類似になるのか少し疑問です。
いくら外観類似だとしても、
- テイオンってめっちゃ造語チック
- 称呼に影響力でかい「語頭」に差異ある
- しかも、差異音は子音も母音も違う
- 全体で4音なので1音の影響力でかい
- 観念違う
なので、称呼非類似&観念非類似だから、称呼偏重今なら審査段階でさえ登録なってもおかしくなさそう。
なお、この例は審査基準と関係ありません。
また、引き続き外観類似の例として、使わせていただきます。他に何かいい例があればよいですが。。。
まとめ
審査官とは仲良くしましょう
識別力調査に大事もの。それはGoogle
引用:Google
今、世界はGoogleに支配されているところ、ありますよね。
お店選ぶのも、メールするのも、地図調べるのも、何でもGoogleです。
そんなGoogleが商標の審査においても、最重要になってきています。
商標の識別力は、「現実にどう使用されているか」が重要
商標の条文では、「産地、販売地、品質・・・」などを表した商標は識別力なしって言われてます。しかし、一見品質表示ではないような商標でも、識別力なしと認定されることがあります。
なぜなら、現実世界において、どのように使用されているかということを重視して審査が行われているからです。
現実に、品質を表すような使い方をされていれば、「識別力なし!」と認定されます。
じゃあ、ここで言うところの「現実」とは?
現実とは、Googleの検索結果
現実に使用されているかどうかは、「Googleの検索結果」で決まることが多いです。
新聞や雑誌などもありますが、圧倒的にURLを貼られていることが多い。
つまり、今識別力を調べる上で
「過去の審決例で大丈夫だからオッケー!」
「同じようなものが登録されているからオッケー!」
としてしまっては、非常に危ないということです。
まとめ
識別力判断するには、「ググる」ってことがめっちゃ重要です。
商標審決例の調べ方3パターン
商標の 審決例は以下のときに調べます。
(1)調査の結果で判断に困ったとき
(2)意見書・審判請求書に「これでドヤ」って証拠としてぶつけるとき
調べ方は3パターンあります。
①商標審決データベース(アスタミューゼ株式会社)
ここは、主に識別力を調べたります。
また、この商品・役務ってどういう意味?って調べる時は、不使用取消審判の審決を見に行くので、非常に便利。
さらに、4条1項1号とか珍しいものを調べるときも便利。
類否判断は、あまり使いません。
②J-Platpat
審決公報DBは番号わかっていないと検索できないです。
審決速報は、最新のものが見ることができるのが嬉しいですね。
③続 商標類否叢集
続 商標類否叢集 書籍版 | 商標専門誌の出版社パテントジャパン
類否判断はここです。
1文字相違やA+Bなど調べることができます。
要約してくれてるのも嬉しいです。
これは人力で要約してるのでしょうか。すごいです。
ただし、インターフェイスは・・・・改善ありですよね。
まとめ
調査段階で審決調べたところで、やっぱり微妙だなとしか判断できないことは結構あります。
そして、意見書に書いても「過去の判断に拘束されない」とお決まり文句でばっさり切られることも多々あります。
しかし、それでも審決を知っている場合と、知らない場合の判断精度は大きく変わりますので、先人の知恵はありがたく頂戴しましょう。