商標実務のブログ

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「パン・パイナッポー・アッポー・パン」が商標登録できるか検証!

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引用:http://rocketnews24.com/2016/10/21/815570/

 

 「パン・パイナッポー・アッポー・パン」というパンが高校の購買部で人気らしい

今、大人気のピコ太郎のPPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)のパロディ商品「パン・パイナッポー・アッポー・パン」なるものがあるらしいです。

とある高校購買部でめっちゃ売れているらしい。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

rocketnews24.com

 

 

ヤフコメで気になるコメント発見!

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引用:http://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20161021-00000042-it_nlab-life

 そんな記事を見ていると気になるヤフーコメントを発見しました。

 

「わからないけど、商標権みたいなのって大丈夫なのかな?」(ヤフコメ)

 

このコメントを見て嬉しくなる人は間違いなく弁理士知財関係者でしょう。弁理士としてはこれは検証せずにはいられませんよね?

ピコ太郎と関係ないものが商標登録できるんでしょうか?

レッツ検証!!

 

商標登録できるか検証してみました!

 

まずは、 商品について決めましょう

商標登録するには、どのような商品について権利を取得するのか決める必要があります。

今回は、商品「パン」としましょう。

そのため、下記の条件で検証します。

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パン」

 

想定される拒絶理由

 (1)特徴がないよ!(3条1項3号)

 3条1項3号は商標がそのまま商品の性質を表しているなど、ネーミングに特徴(識別力)がない場合に該当します。

 

例えば、商標「アップルパン」だと「りんごが入ったパンがだよね」とすぐに商標の性質がわかってしまいますので、この拒絶理由に該当することとなります。

 

では、「パン・パイナッポー・アッポー・パン」はどうでしょう。

これについても、もしかしたら

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」の「パイナッポー」部分は、パイナップルの意味であり、「アッポー」部分は、アップル(りんご)の意味であることを容易に想起されます。

そうすると、当該商標を商品「パン」に使用したときは、全体で「パイナップルとりんごを含むパン」であることが容易に認識できるため、全体では商品の品質を表す商標であることから商標法第3条第1項第3号に該当します。

 

と、言われる可能性あります。簡単に言うと「パイナップルとりんご入っているパンでしょ。商標見たらすぐに性質わかっちゃたよ!だから特徴なし!」ということです。

 

対策方法

  • ロゴ化する
  • 反論する

パン・パイナッポー・アッポー・パン」をロゴ化すれば、ロゴ部分に特徴が出てきますので、一応この拒絶理由は克服できます。

しかし、上記の方法だと、文字部分の特徴が判断されず他のパン屋もパン・パイナッポー・アッポー・パン」を使ってもいいことになるので、文字商標で出願する方が権利範囲的にも広くなり好ましいです。

 

文字商標の「パン・パイナッポー・アッポー・パン」で出願した場合の反論方法ですが、

出願する商標は「パイナッポー・アッポー・パン」ではなく、「パン・パイナッポー・アッポー・パン」のため、このような表現は通常の取引ではされず、全体では一種の造語である旨の反論が考えられます。

 

(2)公序良俗違反だよ!(4条1項7号)

他のどの拒絶理由にも該当しないけど、商標登録を認めたくない場合は、公序良俗違反として、4条1項7号に該当する場合があります。

 

つまり、

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」は、ピコ太郎の「ペンパイナップルアップルペン」のパロディだし、ピコ太郎思い浮かべるし、なんとなく公序良俗違反ですよ! 

 と言われる可能性があります。

 

反論案

ペンじゃなくて、パンだよ!関係ないよ!
パンだとペンみたいにリンゴに刺せないよ!

 

(3)ピコ太郎が売っていると勘違いするよ(4条1項15号)

商標権は、商品ごとの権利となっています。そのため、権利を取得されていない商品については原則、商標登録できるのですが、例外的に有名な商標であれば、お客さんが「あそこの商品かな?」と勘違いする可能性があるので、その場合は、4条1項15号の拒絶理由に該当する可能性があります。

 

つまり、

「パン・パイナッポー・アッポー・パン」という商品名を見たお客さんは、その商品についてピコ太郎か、その関連会社が売っていると思うよね。だから全く関係ない会社が「パン・パイナッポー・アッポー・パン」として売った場合は、ややこしいからダメだよ。 

 と言われる可能性があります。

 

反論案

いや、今回はペンじゃなくてパンだよ!全然違うよ!

 

(4)商品の書き方に問題あるよ(4条1項16号)

商品の書き方がちょっと問題あるときに、4条1項16号に該当することがあります。

専門用語では「品質誤認」と言ったりします。

 

もし「パン・パイナッポー・アッポー・パン」という商品名のパンが、パイナップルもりんごも入っていないただのロールパンだとしたら、どう思いますか?

 

ちょっと怒りますよね。

菓子パン好きの僕なら結構怒ります。

 

え?なんで?「パン・パイナッポー・アッポー・パン」なのに、パイナポーもアッポーも入ってないんですか?

 

って。

そういうことがないように

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パン」

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パイナップルとりんごを使用してなるパン

 

に商品を書き換えましょう。

 

-------------追記 2016/10/29 13:45------------------ 

不正の目的で出願しているよね?(4条1項19号)

ピコ太郎と売っているとは思われなくても(4条1項15号が該当しなくても)、ピコ太郎に商標権の買い取りを迫ったり、不正の目的がある場合には4条1項19号に該当します。

 

不正の目的とは?(商標審査基準引用)

(イ) 外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないこと を奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権 利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。

(ロ) 日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの。

 

反論案

基本は商標非類似であるというしかありません!

 

「ペン・パイナッポー・アッポー・ぺン」(ピコ太郎)

「パン・パイナッポー・アッポー・パン」(今回の商標)

 

称呼:語頭音「ピ」「パ」が違うので非類似

外観:「ピ」「パ」部分が違うので非類似

観念:「ペン」「パン」で違うので非類似

→そのため商標非類似の旨の反論案が考えられます。

 

※周知商標が造語である場合は不正の目的があると推認されるので、今回の場合は、不正の目的がないという反論は厳しいです。

 

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その他(早期審査制度の利用)

そして、既に商標を使用しているので、「早期審査制度」を使って審査期間を6ヶ月から2ヶ月に短縮することが良いですね。
流行りが終わらないうちに商標登録した方がよいと思うので!

 

 

まとめ

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パイナップルとりんごを使用してなるパン」

 

で出願した場合は、下記の拒絶理由が想定されます。

  • 特徴がないよ!(3条1項3号)
  • 公序良俗違反だよ!(4条1項7号)
  • ピコ太郎が売っていると勘違いするよ(4条1項15号)
  • 不正の目的で出願しているよね?(4条1項19号)

 

感触としては登録可能性は2〜3割くらいかなと思います。

審査官によっては、運良く通してくれることもあるかもしれませんが、基本は厳しそうです。

 

以上!