商標実務のブログ

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商標の検索式の作り方とコツ

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商標検索するとき検索式はどうやって作れば良いのでしょうか。

僕は1000件以上商標調査をしてきて、ある時、商標の検索式の作り方にはパターンがあることに気がつきました。

この記事で紹介するパターンを使えば、ほとんど考えることなく網羅的な検索式を作ることができます。

正直、商標の検索式を作るのは特許と違ってめちゃくちゃ簡単です。

それでは、手順をみていきましょう。なお、使用するデータベースはJ-PlatPatです。


【手順1】商標の称呼の候補を出す

検索式を作る前に、最初に商標の称呼の候補を全て洗い出しましょう。


今回は、「Chrysanthemum Sky」という商標を例にします。

まずは、「Chrysanthemum」部分と「Sky」部分の称呼を確定させます。

「Chrysanthemum」部分 は何と読めばよいでしょうか?

 

読み方を調べる方法は大きく2つあります。

(1)Googleで読み方を調べる

読み方を調べるために「Chrysanthemum」「Chrysanthemum 読み方」などでググってみましょう。

 

そうすると、wikipediaが見つかりました。

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引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/キク属

 

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引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/クリサンシマム

 

 

wikipediaによると「クリサンセマム」または「クリサンシマム」と読むことがわかりました。

 

しかし、これだけでは、まだ不安です。他にも読み方があるかもしれませんので、今度は過去の登録例ではどのように読んでいたかを調べます。

 

(2) J-PlatPatで読み方を調べる

J-PlatPatの「商標(検索用)」で「Chrysanthemum 」を検索します。

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そうすると、先行登録から

  • 「クリサンズマム」
  • 「クリサンサマム」
  • 「クリサンセマム」

という称呼(参考情報)が見つかりました。

 

「Chrysanthemum 」部分の読み方

「Chrysanthemum 」部分の読み方は、下記の4つがあることがわかりました。

  1. 「クリサンシマム」
  2. 「クリサンズマム」
  3. 「クリサンサマム」
  4. 「クリサンセマム」

 

「Sky」部分の読み方

なお、「Sky」部分の読み方は「スカイ」のみで大丈夫です。

  1. 「スカイ」

※Skyの読み方について

ローマ字3文字のときは、「エスケーワイ」などローマ字読みをさせることもありますが、「SKY」の場合は、先行登録を調べると全て「スカイ」の称呼が付されていたので、「エスケーワイ」の称呼を考えなくても「スカイ」だけで網羅的な検索ができます。

 

 

【手順2】「称呼検索」の検索式を作る

結合商標「A+B」で称呼検索をする場合は、検索式は、下記の3パターンに限られます。

  1. 「A」
  2. 「B」
  3. 「A+B」

 しかし、「A」や「B」に入る称呼が複数考えられる場合は、それらの組み合わせ全パターンを考えなければなりません。

今回の「Chrysanthemum Sky」の例で考えてみましょう。先ほど調べた各部分の称呼を考慮すると下記のようになります。

1.「Chrysanthemum」

「クリサンシマム」
「クリサンズマム」
「クリサンサマム」
「クリサンセマム」

2.「Sky」

「スカイ」

3.「Chrysanthemum Sky」

「クリサンシマムスカイ」
「クリサンズマムスカイ」
「クリサンサマムスカイ」
「クリサンセマムスカイ」

 

また、J-PlatPatの「称呼検索」は一度の検索で2つの称呼を同時に調べることができます(これは時間短縮のコツです!)ので、実際には、下記の5パターンが称呼検索の検索式になります。

  • 「クリサンシマムスカイ」「クリサンズマムスカイ」
  • 「クリサンサマムスカイ」「クリサンセマムスカイ」
  • 「クリサンシマム」「クリサンズマム」
  • 「クリサンサマム」「クリサンセマム」
  • 「スカイ」

これで「称呼検索」の検索式が完成しました!

 

【手順3】「商標(検索用)」の検索式を作る

「称呼検索」で90%以上先行登録は発見できますが、たまにそれだけでは発見できない場合があります。
その場合は、「商標(検索用)」で検索する必要があります。

結合商標「A+B」を「商標(検索用)」で検索をする場合は、検索式は、下記の3パターンになります。

  1. 「A?」
  2. 「?B」
  3. 「?A+B?」

なお、「?◯◯」は前方一致、「◯◯?」は後方一致、「?◯◯?」は前方後方一致を表します。

 

今回の「Chrysanthemum Sky」の例で考えてみましょう。先ほど調べた各部分の称呼も考慮すると下記のようになります。

1.「Chrysanthemum」

「Chrysanthemum?」

「クリサンシマム?」

「クリサンズマム?」

「クリサンサマム?」

「クリサンセマム?」

2.「Sky」

「?Sky」

「?スカイ」

3.「Chrysanthemum Sky」

「?ChrysanthemumSky?」

「?クリサンシマムスカイ?」

「?クリサンズマムスカイ?」

「?クリサンサマムスカイ?」

「?クリサンセマムスカイ?」

 

ローマ字だけではなく、念のためカタカナも検索しています。案件によってはひらがなや漢字で調べた方が良い場合もあります。

また、J-PlatPatの「商標(検索用)」は一度の検索で多くの文字を同時に調べることができます(これは時間短縮のコツです!)ので、実際には、下記の3パターンが商標(検索用)の検索式になります。

  • Chrysanthemum? クリサンシマム? クリサンズマム? クリサンサマム? クリサンセマム?
  • ?Sky ?スカイ
  • ?ChrysanthemumSky? ?クリサンシマムスカイ? ?クリサンズマムスカイ? ?クリサンサマムスカイ? ?クリサンセマムスカイ?

これで「商標(検索用)」の検索式が完成しました!

 

 

まとめ

いかがでしょうか。以上の手順に沿って検索式を作るだけで、速くモレのない検索式を作成することができます!しかもパターン化しているので、楽チンです!