3条2項が無理なら、3条1項3号で克服!
『弁理士のくせにタイトル間違ってるわ!こいつ!』
『3条1項3号が無理なら、3条2項で克服だろ!』
という声が聞こえそうですが、実は実務では逆のことが起きています。
今回のブログ記事の内容は、弁理士になりたてのときに一番びっくりしたことです。
弁理士試験と実務との違い
3条2項はざっくりいうと、
「商標が品質表示などで識別力ないけど、この商標は有名だから登録してくださいよ〜」
というものです。
弁理士試験では「3条1項3号で無理なら3条2項で克服しよう!」と教えられました。
しかし、3条2項を認めてもらおうと思えば、めちゃくちゃ大変で、大企業のそこそこ知られている商品であっても認められないこともあります。
そんなときは、
『この商標は3条2項までは有名ではないんだけど、そこそこ有名だから需要者がその商標見たときには品質表示ではなくて、うちの会社の商標って思うからこれって結果的に識別力あるってことだよね。ってことは、3条1項3号該当しないよね!だから登録査定ください!』
と主張します。
つまり、実務では3条2項が無理なら、3条1項3号で克服を狙います!
でも審査段階ではこの主張は中々通りません。
なぜなら、この判断はかなり例外的なので、画一的に審査したい審査官的には認めにくいのです。
審判までいくと、結構実際の使用状況みてくれますので、識別力ありとして、主張を認めてくれます。
ただし、誰がどう見ても識別力ないものは無理です。
実際の意見書などには、「一種の造語だ!」+「使用していて有名だ!」と2つセットで主張することが多いですね。
審決例
(1)リラックスワゴン(不服2011-15746)
また、当審において職権をもって調査するも、「リラックスワゴン」の文字が、本願の指定商品中の「ワゴン型自動車」の分野において、商品の品質を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実を発見することはできなかったのに対し、別掲によれば、請求人は、自己の生産、販売する「キャンピングカー」の名称として、本願商標と同一の構成からなる「リラックスワゴン」の文字を使用し、当該商品を全国各地のキャンピングカーを対象とする展示会に出展している事実が認められること、また、それらの展示会は、テレビ局、新聞社及び車専門誌などのマスコミ各社、日本自動車工業会及び一般社団法人日本RV協会などが後援や特別協賛として参加していることからすれば、「リラックスワゴン」の文字は、請求人の業務に係る商品に使用する商標として、その主たる需要者であるキャンピングカーの愛好家にとって、一定程度認知されているものと窺い知れるところである。
してみれば、本願商標をその指定商品に使用した場合、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示してなるものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、また、その指定商品中のいずれの商品に使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願についての拒絶の理由を発見しない。引用:不服2011-15746
(2)ダチョウ抗体マスク(不服2010-24330 )
上記で認定した事実によれば、「ダチョウ抗体マスク」の文字は、請求人の業務に係る商品に使用する商標として、その取引者及び需要者に、一定程度認知されているものと認められる。
・・・・
そうとすれば、「ダチョウ抗体マスク」の文字は、補正後の本願指定商品との関係において、原審説示のように「ダチョウ由来の抗体を用いたマスク」を表す商品の品質表示であるというよりは、上記衛生用マスク及び医療用マスクを表す名称として請求人が創作した造語からなる商標とみるのが相当であるから、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生ずるおそれもないというべきである。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。引用:不服2010-24330
意見書・審判請求書の書き方
3条2項の書き方と一緒です。
使用商標の証拠たくさん集めて、主張します。
書き方は下記を参照。
【参考】特許庁における商標法第3条第2項の運用
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/t_mark09/paper04.pdf
まとめ
弁理士試験と実務って差がありますよね〜。
使用状況の主張は3条1項3号で拒絶理由克服のネタにオススメです!