商標実務のブログ

日々の商標実務で気付いたことを中心に

【弁理士の日企画】知財業界のライバル

こんにちは宮崎です。

今日は弁理士の日ですね!

ドクガクさんの「弁理士の日企画」に今年も参加しており、 「知財業界のライバル」というテーマで記事を書きます。

 

検討

知財業界と言っても、知財部やシステム会社、そして特許事務所では結構立場が違います。
自分は特許事務所側の立場なので、特許事務所についてお話をしたいと思います。

 

知財業界のライバルはどこでしょうね。

 

弁理士は、特許出願の代理などの独占業務を持っています。
そのため、弁理士以外はこれらの業務ができません。
唯一、例外的に弁護士が弁理士登録できますので、直接的なライバルといえば弁護士なんですけども、実際はきちんと住み分けが出来ています。
弁護士が明細書を書くことはほとんどありませんし、訴訟になると協力してやるので、
弁護士がライバルと言うかといえばそんなことはありません。

 

一方、士業以外ではAIが考えられます。
弁理士は AI で代替される職業のランキングで上位に入っていますが、実際には代替されるとは思っていませんので、別に AI もライバルになると思いません。
逆にAIを使うことで、さらに弁理士の必要性は高まります。(このことは、また別の記事で)

 

結論としては知財業界のライバルはいないということになるんですが、
もしあるとすればブロックチェーンかなと思いました。

 

知財業界のライバル

ブロックチェーンビットコインなどに代表される分散型のネットワーク技術です。

 

これを使えば、例えば特許権や商標権などをブロックチェーン上で表現して、その中で権利の担保ができるようになるかもしれません。

 

そうすれば、今のようにとてもややこしい書類を用意しなくても、簡単に知財の権利を得ることができます。例えば、

・写真1枚だけで特許権を得られる。
・ホームページの魚拓だけで商標権が得られる。

など、素人でも権利が得られるようになります。

 

権利行使はどのようにするかと言うと、各種プラットフォーマーと連携することが考えられます。

例えば Google Facebook Amazon などのプラットフォーマーと連携して、侵害者に対してこれらのプラットフォームを使えないようにすれば、現在の差止請求権と同様の効果を発揮することができます。
損害賠償請求権としては、知財権のプラットフォーム上使えるコインを発行しておきそのコインを担保にしておくことが考えられます。

そうなると、弁理士を通さずに誰でも権利を確保できるようになるので、知財業界に大きなシュリンク(市場縮小)が起きます。


もちろん、こういった未来が起きるかは不明ですが、可能性はゼロではありません。
そのため、知財業界のライバルとしてはブロックチェーンが考えられるのではないかなと思いました!

 

ありがとうございました!

 


【ご参考】ブロックチェーン特許権の考察記事

btcnews.jp

 

blog.froriep.com

弁理士受験生&知財関係者のための無料コワーキングスペース

こんにちは!

弁理士の宮崎です。

 

今度、「弁理士受験生&知財関係者のための無料コワーキングスペース」を作ろうと思っています。

コワーキングスペースとは、勉強できたり、仕事できたりする作業スペースです。

 

そこで皆様にもっと、便利に活用していただくためにアンケートを取りたいと思っています。

 

▼利用料
 無料

▼利用時間
・平日18:00〜22:00
・土日10:00〜20:00
wifi完備、電源タップ完備
(利用時間は、予告なく変更することがあります。)

▼場所
東急田園都市線 二子玉川駅 徒歩5分

▼利用資格
弁理士受験生&知財関係者
・定員あり

▼目的
弁理士受験生を応援したい!
(特に、費用が安く済み、一番効果的な勉強方法をシェアしていきたい)
知財関係者の勉強や仕事を促進したい!
知財の情報交換やイベントをライトに行いたい!
・新しい知財のコミュニティを作りたい!

 

もしご興味がある方は、下記のアンケートにぜひお答えください!

弁理士受験生&知財関係者のための無料コワーキングスペース@二子玉川 アンケート・事前受付

 

よろしくお願いします!

【弁理士の日企画】商標弁理士の職業病

こんにちは宮崎です!

 

毎年恒例、ドクガクさん企画の

弁理士の日」に、弁理士ブロガーが何か同じテーマで書く!ことに参加しています。

 

今年のテーマは弁理士の職業病」です。

 

僕は現在、特許よりも商標の方が断然やってますので、商標弁理士の職業病として、書きます!

 

商標弁理士の職業病

僕の職業病は、

 

®にやたら反応する

 

です。

 

 

ロゴマークの右下などに®が付されていますが、新しいロゴを見ると最初にそっちを見ちゃうんですよね。

 

f:id:toreru:20170701110352p:plain

http://sibazaburou.blog.fc2.com/blog-entry-15.html

 

上の画像だと、

(1)まず®見る

(2)その後adidasの画像見る

 

その順番でロゴマーク見るのは商標弁理士くらいですね。

 

ちなみに®は登録商標の意味で、ロゴに権利ありますよという意味です。

 

 

感想

悩みましたが、商標弁理士の職業病ってそんなに思いつかなかったですね。気づいてないだけで、結構あるんでしょうが。

 

 

 

 

全然関係ないですが 

 

あと、職業病と全然関係ないですが、この商標業界のことを考えていて、

そういえば、「商標業界のお気に入りの単語なら結構あるな!」と思ったので、ついでに書いていきます!

 

 

 

商標業界のお気に入りの単語

 

(1)セントラルアタック

これは完全に必殺技ですよね。

間違えなくビーム的なものを出しています。

 

ゴレンジャーの5人が揃ったときにだけ出せる技っぽいです。

 

セントラルアターーック!

 

 

セントラルアタックとは、国際登録の日から5年以内に本国における基礎出願・基礎登録が拒絶、取下、放棄、無効、取消となった場合には、国際登録も取り消されるというマドリッドプロトコル上の制度。

セントラルアタックとは - 特許用語 Weblio辞書

 

(2)マドリッドプロトコル

とてにかく言いにくい!

10回言うと1回は噛みます。

そのため、普通は略して「マドプロ」と言います。

もうマドプロの方が正式名称じゃないかと思うくらい「マドリッドプロトコル」は使われないです。

 

ヤフオク」とは言うけど、「ヤフーオークション」とは言わないみたいな関係に似てますね。

 

マドリッドプロトコルとは、1989年に作成され、1995年12月に発効した商標の国際登録について定める国際条約である。標章の国際登録に関するマドリッド協定(マドリッド協定)の議定書という形式を取っているが、マドリッド協定とは独立した条約である。

マドリッドプロトコルとは - 特許用語 Weblio辞書

 

 

(3)精神拒絶

怖い。

 

精神が拒絶されるって、どんな恐ろしい状態なんでしょう。。。

 

 

商標出願の審査では,同一人が同一の商標について同一の商品又は役務を指定して重複して出願したときは,一定の事由に該当する場合を除き,「商標法制定の趣旨」に反するとして出願を拒絶する運用がされている。所謂「精神拒絶」である。

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201207/jpaapatent201207_031-040.pdf

 

 

 

(4)くじ

これは商標弁理士の夢です。

くじで権利がもらえるなんて、なんて夢があるのでしょう。

 

このくじに立ち会える弁理士は、非常に限られていて、

いくつもの条件が偶然に重ならないと立ち会うことはできません。

 

商標弁理士は、死ぬ間際に、

「一度は、くじの現場を見たかった・・・」

と言ったとか、言わなかったとか。 

 

特許庁長官に同年同日に競合する同名の商標が出願された場合で、商標登録出願人の協議が成立せず、出願の放棄・取り下げ・却下等がない場合には、くじによって商標登録を受ける者を決定する(商標法8条)。

くじ - Wikipedia

 

 

 

 感想

どの業界でも、独特の専門用語ってありますよね。

インタビューしたら結構面白いかも。

 

 

 

結構、脱線しましたが、

今年も弁理士の日企画ありがとうございました!

それでは!

商標の意見書力をグーンとアップする研究会をします!

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ご無沙汰しております。

宮崎です。

 

 

商標の意見書ってどういう風に書けば良いのか、どのように練習すればよいのか、全然わからないです。

 

そこで、今回は反論に成功した意見書のみを抜粋して、研究します!

全国の優秀な意見書は、実際にどのように書いて克服しているのかを、参加者で議論しながら徹底的にパクる参考にします!!

 

事前準備は一切不要です。

 

このような疑問が解消します。

・意見書の効果的な書き方は何か?

・並存登録などの証拠はどの程度用意すればよいのか?

・強気な口調で書けばよいのか、丁寧な口調の方がよいのか?

 

■勉強会名

商標の意見書研究会

 

 

 

■当日の研究対象

(1)「グレイスクラウド」と「Grace」(4条1項11号)
(2)「餐休」と「さんきゅう」(4条1項11号)
(3)「すずめサブレ」と「すずめ」(4条1項11号)
(4)「骨盤バランスヨガ」(3条1項3号)
(5)「大山のたまご」と「大山たまご」(4条1項11号)
(6)「焼肉ソムリエ」(3条1項6号)
(7)「はじき飛ばし洗い」(3条1項3号)
(8)「OHKi」と「OKI」(4条1項11号)

 

 

■当日の流れ

18:30~18:40 参加者の自己紹介&趣旨説明

18:40~18:55 事案①「グレイスクラウド」と「Grace」

18:55~19:10 事案②「焼肉ソムリエ」

19:10~19:25 事案③「OHKi」と「OKI」

19:20~19:30 質疑応答&感想

 

余力があれば、もっと紹介します。

 

■時間

2017年6月9日(金)18:30~19:30

 

■場所

・大阪会場

宮崎国際特許事務所 内

〒564-0062 大阪府吹田市垂水町3-30-13 ライブビルディング203

 

・ネット

YoutubeLiveでも同時配信します!

遠隔の方はスマホやPCで視聴&コメント参加できます!

(申し込み者しか閲覧できません。)

 

■費用

無料

 

■資料

 

グーグルドライブで共有します。

 

■定員

大阪会場:5人

ネット:10人

 

■主催

宮崎国際特許事務所(担当:宮崎超史)

 

 

■参加申し込み方法

下記のリンクのフォームから応募お願いします。

 

応募フォーム

 

よろしくお願いします!

 

「パン・パイナッポー・アッポー・パン」が商標登録できるか検証!

f:id:toreru:20161028234238j:plain

引用:http://rocketnews24.com/2016/10/21/815570/

 

 「パン・パイナッポー・アッポー・パン」というパンが高校の購買部で人気らしい

今、大人気のピコ太郎のPPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)のパロディ商品「パン・パイナッポー・アッポー・パン」なるものがあるらしいです。

とある高校購買部でめっちゃ売れているらしい。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

rocketnews24.com

 

 

ヤフコメで気になるコメント発見!

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引用:http://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20161021-00000042-it_nlab-life

 そんな記事を見ていると気になるヤフーコメントを発見しました。

 

「わからないけど、商標権みたいなのって大丈夫なのかな?」(ヤフコメ)

 

このコメントを見て嬉しくなる人は間違いなく弁理士知財関係者でしょう。弁理士としてはこれは検証せずにはいられませんよね?

ピコ太郎と関係ないものが商標登録できるんでしょうか?

レッツ検証!!

 

商標登録できるか検証してみました!

 

まずは、 商品について決めましょう

商標登録するには、どのような商品について権利を取得するのか決める必要があります。

今回は、商品「パン」としましょう。

そのため、下記の条件で検証します。

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パン」

 

想定される拒絶理由

 (1)特徴がないよ!(3条1項3号)

 3条1項3号は商標がそのまま商品の性質を表しているなど、ネーミングに特徴(識別力)がない場合に該当します。

 

例えば、商標「アップルパン」だと「りんごが入ったパンがだよね」とすぐに商標の性質がわかってしまいますので、この拒絶理由に該当することとなります。

 

では、「パン・パイナッポー・アッポー・パン」はどうでしょう。

これについても、もしかしたら

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」の「パイナッポー」部分は、パイナップルの意味であり、「アッポー」部分は、アップル(りんご)の意味であることを容易に想起されます。

そうすると、当該商標を商品「パン」に使用したときは、全体で「パイナップルとりんごを含むパン」であることが容易に認識できるため、全体では商品の品質を表す商標であることから商標法第3条第1項第3号に該当します。

 

と、言われる可能性あります。簡単に言うと「パイナップルとりんご入っているパンでしょ。商標見たらすぐに性質わかっちゃたよ!だから特徴なし!」ということです。

 

対策方法

  • ロゴ化する
  • 反論する

パン・パイナッポー・アッポー・パン」をロゴ化すれば、ロゴ部分に特徴が出てきますので、一応この拒絶理由は克服できます。

しかし、上記の方法だと、文字部分の特徴が判断されず他のパン屋もパン・パイナッポー・アッポー・パン」を使ってもいいことになるので、文字商標で出願する方が権利範囲的にも広くなり好ましいです。

 

文字商標の「パン・パイナッポー・アッポー・パン」で出願した場合の反論方法ですが、

出願する商標は「パイナッポー・アッポー・パン」ではなく、「パン・パイナッポー・アッポー・パン」のため、このような表現は通常の取引ではされず、全体では一種の造語である旨の反論が考えられます。

 

(2)公序良俗違反だよ!(4条1項7号)

他のどの拒絶理由にも該当しないけど、商標登録を認めたくない場合は、公序良俗違反として、4条1項7号に該当する場合があります。

 

つまり、

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」は、ピコ太郎の「ペンパイナップルアップルペン」のパロディだし、ピコ太郎思い浮かべるし、なんとなく公序良俗違反ですよ! 

 と言われる可能性があります。

 

反論案

ペンじゃなくて、パンだよ!関係ないよ!
パンだとペンみたいにリンゴに刺せないよ!

 

(3)ピコ太郎が売っていると勘違いするよ(4条1項15号)

商標権は、商品ごとの権利となっています。そのため、権利を取得されていない商品については原則、商標登録できるのですが、例外的に有名な商標であれば、お客さんが「あそこの商品かな?」と勘違いする可能性があるので、その場合は、4条1項15号の拒絶理由に該当する可能性があります。

 

つまり、

「パン・パイナッポー・アッポー・パン」という商品名を見たお客さんは、その商品についてピコ太郎か、その関連会社が売っていると思うよね。だから全く関係ない会社が「パン・パイナッポー・アッポー・パン」として売った場合は、ややこしいからダメだよ。 

 と言われる可能性があります。

 

反論案

いや、今回はペンじゃなくてパンだよ!全然違うよ!

 

(4)商品の書き方に問題あるよ(4条1項16号)

商品の書き方がちょっと問題あるときに、4条1項16号に該当することがあります。

専門用語では「品質誤認」と言ったりします。

 

もし「パン・パイナッポー・アッポー・パン」という商品名のパンが、パイナップルもりんごも入っていないただのロールパンだとしたら、どう思いますか?

 

ちょっと怒りますよね。

菓子パン好きの僕なら結構怒ります。

 

え?なんで?「パン・パイナッポー・アッポー・パン」なのに、パイナポーもアッポーも入ってないんですか?

 

って。

そういうことがないように

 

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パン」

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パイナップルとりんごを使用してなるパン

 

に商品を書き換えましょう。

 

-------------追記 2016/10/29 13:45------------------ 

不正の目的で出願しているよね?(4条1項19号)

ピコ太郎と売っているとは思われなくても(4条1項15号が該当しなくても)、ピコ太郎に商標権の買い取りを迫ったり、不正の目的がある場合には4条1項19号に該当します。

 

不正の目的とは?(商標審査基準引用)

(イ) 外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないこと を奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権 利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。

(ロ) 日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの。

 

反論案

基本は商標非類似であるというしかありません!

 

「ペン・パイナッポー・アッポー・ぺン」(ピコ太郎)

「パン・パイナッポー・アッポー・パン」(今回の商標)

 

称呼:語頭音「ピ」「パ」が違うので非類似

外観:「ピ」「パ」部分が違うので非類似

観念:「ペン」「パン」で違うので非類似

→そのため商標非類似の旨の反論案が考えられます。

 

※周知商標が造語である場合は不正の目的があると推認されるので、今回の場合は、不正の目的がないという反論は厳しいです。

 

-----------------------------------------

 

その他(早期審査制度の利用)

そして、既に商標を使用しているので、「早期審査制度」を使って審査期間を6ヶ月から2ヶ月に短縮することが良いですね。
流行りが終わらないうちに商標登録した方がよいと思うので!

 

 

まとめ

商標「パン・パイナッポー・アッポー・パン」

商品「パイナップルとりんごを使用してなるパン」

 

で出願した場合は、下記の拒絶理由が想定されます。

  • 特徴がないよ!(3条1項3号)
  • 公序良俗違反だよ!(4条1項7号)
  • ピコ太郎が売っていると勘違いするよ(4条1項15号)
  • 不正の目的で出願しているよね?(4条1項19号)

 

感触としては登録可能性は2〜3割くらいかなと思います。

審査官によっては、運良く通してくれることもあるかもしれませんが、基本は厳しそうです。

 

以上!

【弁理士の日企画】特許庁が人工知能を具体的にどのように活用するのか考察してみたよ

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ドクガクさんの「弁理士の日」にちなんだ企画「弁理士の日記念ブログ企画2016」に参加しています。

今年のテーマは、「知財業界でホットなもの(又は新しいもの)」なので、今年結構話題になった特許庁人工知能について自分なりに考察したいと思います。

 

人工知能については独学ですので、間違っていることも多々あるかもしれませんが、読み物として楽しんでいただければ嬉しいです。

  

特許庁人工知能の導入を検討

今年の3月に特許庁が「人工知能で業務を効率化できないか調べて欲しい」との公募を始めました。官公庁で人工知能を導入しようとする試みをおそらく始めてで、話題になりました。

この事業には、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所が入札しました。この会社はこれまでも特許庁のシステムに関わっており、人工知能特許庁の業務にどこに適用できるかの把握が容易なため、選ばれたと思われます。

 

【公募】平成28年度「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」の企画提案の公募について

https://www.jpo.go.jp/koubo/koubo/pdf/jinkou_chinou/01.pdf

 

【入札結果】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所

www.jpo.go.jp

 

人工知能ってそもそも何ぞや

昨今話題になっている人工知能とは、ほとんど「ディープラーニング」という技術のことを指しています。

このディープラーニングと過去の手法との最大の違いは、正解データを教えることで自動的に対象物の特徴を学習していくことです。

例えば、猫の画像を大量に与えると、耳がついていて、目がくりってしているモフモフしている動物が猫だよという条件なしに、猫の概念がわかります。

 

【参考サイト】

thinkit.co.jp

 

知財ディープラーニングで今の時点でできていることは

これまでに知財ディープラーニングの技術を使ったサービスは、UBIC(ユービック)の特許検索システム「PATENT EXPLORER」があります。

UBICは、特許分類やキーワードだけではなく、特許文書を検索の入力として、特許検索を行うシステムを開発しました。

この検索の凄いところは、これまでの職人技だった検索式の作成をしなくてもよいところです。

僕はまだ使ったことがないですが、近い将来的には、精度がガンガン上がっていきますのでこの方法がスタンダードになっていくと思われます。

 

【参考】PATENT EXPLORER

調査対象の特許文書に対して、関連性の高い文書を人工知能が判断して自動で順番に表示します。さらに関連性の高い段落をピンポイントで表示するため、全ての文書を見返す必要がありません。またフィードバックをもとに再学習も自動でおこなうため精度を高めることができます。

 

引用:PATENT EXPLORER - 特許調査・知財戦略支援システム | UBIC Lit i View - 人工知能によるデータ解析

 

特許庁人工知能を具体的にどのように活用するのか

それでは、本題の特許庁人工知能をどのように活用するのかを考察していきましょう。

今回は、「データ」「精度」「効果」の3つの軸から実現可能性を予想したいと思います。それぞれを5段階で評価します。

 

データ   :データ数が十分にあるか

精度    :実用可能な精度を達成できるか

効果    :実現されればこれまでと比べてどれくらい効率化されるか

 

 

(1)特許文献の検索(国内のみ)

総合  ★★★★★

データ ★★★★★

精度  ★★★★★

効果  ★★★★☆

 

適用方法

先ほどのUBICと同様の方法で、入力が明細書などの特許文書で、その文書と似ている順に文献を提示する機能が考えられます。

ただし、UBICはいくつか特許を取っているそうなので、その技術と抵触しないようにすることが必要です。

また、将来的には図面も入力の対象になると考えられます。文書と図面を同時に入力することにより、さらに精度を上げることができるかもしれません。

 

考察

事前の学習用のデータは、これまでの特実の明細書なので、めちゃくちゃたくさんあります。

 

精度を5段階中の5にしましたが、これはすぐに高い精度が出せるということではなく、実用化するときに求められる精度がそこまで高くないということです。

精度を求められない理由としては、あらかじめFIなどで絞っておいて、そこからさらに類似順に並び変えるということが想定できるからです。

出願日順よりかはマシだろうと思えば導入は早いかもしれません。

 

効果は、精度によりますが、明らかに似ている文献などはすぐに見つけてくれるのではと思います。1件あたり10分の短縮でも特許出願件数はかなりの数がありますので、全体では十分に費用対効果が見込めると思います。 

 

(2)特許分類付与

総合  ★★★★☆

データ ★★★★

精度  ★★★★

効果  ★★★★★

 

適用方法

特許の明細書などを入力して、FIやFタームを予想する機能が考えられます。

 

考察

データは、現在、明細書とFI・Fタームの組み合わせが膨大にあります。

ただし、FI・Fタームの中には使用頻度の少ないものもあり、それらのデータ量が足りない場合は、適切に予想することが難しくなります。このあたりをどう解決するかは課題です。

 

全自動的にFI・Fタームを決めるのであれば高い精度を求められます。

中途半端な精度であれば、修正ばっかり必要となるので、現場からは「かえってない方がマシだ」と言われる可能性があります。

しかし、その前段階として例えばFIのA~Hセクションの分類分けならば、そこそこ高い精度が出せるのではと思います。

  • Aセクション 生活必需品 
  • Bセクション 処理操作;運輸 
  • Cセクション 化学;冶金 
  • Dセクション 繊維;紙 
  • Eセクション 固定構造物 
  • Fセクション 機械工学;照明;加熱;武器;爆破 
  • Gセクション 物理学 
  • Hセクション 電気 

上記のように各分野に分けるだけでも、その後のFI・Fターム付与を得意な担当者に振り分けることができますので、効率化は期待できます。

現在でも大きな分類分けを事前に行っているようですが、それよりさらに精度が上がることでしょう。

 

効果についてですが、FI・Fタームがほぼ全自動になれば相当なコスト削減になりますが、一気には難しいでしょう。

分類分けできる数を増やしながら、トライアンドエラーで徐々に改善を重ねて精度を上げていくと思われます。

 

【参考】分類付与の方法について

分類付与事業 | 一般財団法人 工業所有権協力センター(IPCC)

 

(3)紙で提出された書類の電子化(紙から文字を読み取る)

総合  ★★★★

データ ★★★★

精度  ★★★★

効果  ★★★

 

適用方法

紙で提出された書類から文字を読み取り、電子化する機能です。

今でもこの機能は使われていますが、さらに精度が高いものを適用できます。

 

【参考】書面から文字を読み取る(OCR)の精度高いやつ

bita.jp

 

考察

データですが、すでにPC用に様々なフォントがありますので、それらを学習用データとできます。また、文字を特定するために文字の形だけでなく、文脈の自然さからも判断する場合は(例えば、「工」と「エ」の違いは文字の形よりも文脈から判断する方が適当)、これまでの明細書を学習用データとさせることもできます。

 

このように「画像」(文字の形)と「文章」という異なるファクターを一気に学習させることができるのはディープラーニングの大きな特徴です。

 

効果ですが、既にOCR(文字読み取り)はこの業務に取り入れているらしいので(特許庁の担当者に聞きました)、ディープラーニングと既存の技術の精度が明らかに違わない限り導入はされないでしょう。

ただ、文字認識はディープラーニングの得意分野でもあるので、期待はしたいところです。

 

なお、画像商標から文字を読み取り「商標(検索用)」を作成する業務も同じような方法でできますが、ロゴ化しているぶん結構難しくなります。

 

ここが改善されれば電子化手数料が安くなることが期待されます。

 

(4)特許文献の検索(海外)

総合  ★★

データ ★★☆☆

精度  ★★☆☆☆

効果  ★★★★

 

適用方法

先ほどの「(1)特許文献の検索(国内のみ)」と同様の方法です。

つまり日本語の特許文書を入力として、関連する海外の外国語特許文献を探し出す機能が考えられます。

 

考察

現在、翻訳はディープラーニングにより精度の向上が続いています。

特許用語という特殊な世界でも翻訳の精度が上がれば、海外の文献を探すことも容易になります。

 

翻訳は英語→日本語に限ったものではありませんので、中国語やその他の言語でも網羅的に精度の高い検索ができることになるでしょう。

そうすると、特許調査はもはや日本国内だけでは到底足りず、海外が文献検索の中心になっていくと思われます。

特に人工知能、IoTなど新しい技術は日本よりも米国・中国の方が進んでいますので、その傾向はますます強くなるでしょう。

 

 

(5)ウィーン図形分類付与

総合  ★★★☆☆

データ ★★☆☆

精度  ★☆☆☆

効果  ★★★★☆

 

適用方法

画像商標を入力して、ウィーン図形分類を予想する機能が考えられます。

 

考察

ウィーン図形分類はFI・Fタームと同じくデータに偏りがありますので、付与されている数が少ない図形分類をどうするかという問題があります。

 

また、「12.3.1 衛生施設」という分類であれば、お風呂や蛇口などが出てきて単純に図形の形状だけでは判断できません。

このあたりの概念的な分類もなかなか難しい課題です。

 

(6)その他

その他にも検討したものの一覧です。

 

(6−1)すぐには導入できないが実現可能

意匠分類付与

意匠類似画像検索

商標類似画像検索

(6−2)かなり厳しいが、頑張れば実現可能かも

意匠 類否判断
商標 類否判断

商標 拒絶理由通知自動作成(ただし、4条1項11号と3条の一部に限る)

(6−3)現在の技術では相当困難
特許 新規性・進歩性の判断

→論理的な考えや、抽象化などは、現在の技術で達成することは相当困難。ただ、未来はどうなるかわかりませんので、将来的には進歩性判断の候補くらいは出してくれるかもしれません。

 


特許庁業務に人工知能が使われるとどうなるか、特許庁はどう変わるか

メリット

・審査の迅速化

・先行文献の調査範囲の拡大
→より強固な権利となる

・人件費削減

→印紙代減額。特に、電子化手数料が減額

 

デメリット

人工知能の判断に引っ張られる可能性

・出願人との情報格差

→外国語文献が引用文献の中心となることが増え、出願人が調査してもほぼ調べ切れない可能性がある。

→対抗手段としてはUBICなどの人工知能を応用した検索ソフトは必須に

 

その他

・システム投資の半分くらいは、人工知能関連になる

人工知能ベンダーは嬉しい

 

まとめ

印紙代が安くなって、審査が速くなって、審査の質も向上する可能性があります。

ただ、人工知能の技術の進歩は凄まじく、専門家でさえ追いつくのが大変です。

うかうかしていると、すぐに陳腐化する恐れもあり、どれだけ早く導入できるかが鍵となってくると思います。

来年には人工知能をどこに使うかの報告書が出てきますので楽しみです!

 

最後に

ドクガクさん「弁理士の日企画」お誘いありがとうございました!楽しく記事書けました!

不使用取消審判を請求する前のチェックリスト5項目

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 商標の不使用取消審判は、形式が決まっているので審判請求書を書くことは比較的簡単です。

しかし、事前に調べておかないと思わぬところで失敗する可能性もあります。

この記事では、不使用取消審判を請求する前に今一度確認しておくべきチェックリスト5項目をまとめました。

 

(1)審判請求日は登録日から3年経過しているか

とても基本的なことですが、審判請求日が当該商標の登録日から3年経過しているかどうかを確認しましょう。

審判請求日が、当該商標の登録日から3年経過していないと不使用取消審判の要件を満たしません。

 

イレギュラーな事態が起こった場合に、こういう基本的な確認を飛ばしてしまう可能性があるので注意が必要です。

 

50条

「継続して3年以上・・・登録商標の使用をしていないときは、・・・商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」

 

 【参考審判】

shohyo.shinketsu.jp

 

 

(2)被請求人が倒産していないか

被請求人が法人の場合は、その法人が倒産していると、特許庁が審判請求書の副本を送達することができない可能性があります。

そうすると、登記簿謄本に記載している法人の代表の住所に副本を送ります。

それでも送ることができない場合は「公示送達」になるのですが、その前に・・・・

 

出願人が現地調査する必要があります!!!

 

出願人(もしくは代理人)が法人の住所地まで行き、写真パシャパシャ取り、現地の人にヒアリングします。

その後、法人の代表の住所地まで行き、同じく写真&ヒアリングが必要です。

 

僕はこの作業を行ったことがありますが、めちゃくちゃ大変です。また、事前にこの現地調査の費用を見積りに含めていないと、後から出願人にこの費用を請求することが難しくなる場合もあり注意が必要です。

 

そもそも倒産していれば、その旨を意見書で主張でき、不使用取消審判も必要がない場合もあります。

 

不使用取消審判を請求する前に、必ず被請求人の倒産状況を把握しましょう。

 

被請求人が海外の法人の場合

では、被請求人が海外の法人の場合はどうなるのでしょうか。

特許庁に問い合わせたところ、海外の場合は、住所不明でも現地調査に行かなくても良いそうです。

よかったよかった。

 

【参考サイト】登記情報調べるサイト

www1.touki.or.jp

 

【参考審判便覧】破産した会社を被請求人として請求された審判請求の取扱い 

https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/sinpan-binran_16/50-00.pdf

 

(3)必要な商品・役務だけを取消し対象にしているか

 不使用取消審判には2種類の取消し方法があります。

 

指定商品・指定役務の全部を取り消す「全部取消し」と指定商品・指定役務の一部だけを取り消す「一部取消し」です。

 

「全部取消し」は、欲張り過ぎのあまり好ましくない方法です。

例えば、請求人がそこまで欲しくない商品まで取消し対象としていると、実はその商品が被請求人が使用していて審判が失敗したなんてこともよくあります。 

また、全部取消しされると被請求人側は商標権の全てがなくなるので、本気で反論する可能性も高まります。

 

基本は「一部取消し」を考えましょう。欲しい商品だけ最低限を取消し対象とします。

特に被請求人側の事業と関連が深そうな商品は極力避けることが無難です。

 

対応表を書く

一部取消しの場合は、きちんと取消すべき商品が全て網羅されているかどうかを確認するために、「対応表」を書くとミスが減ります。

 

僕はこんな風に書いています。

 

(例)

相手の指定商品:「被服、ベルト、ガーター、セーター、履物」

希望する商品:「洋服」(17A01) 

の場合

     <対応表の例>

指定商品・指定役務

類似群コード

チェック

被服

17A01
17A02
17A03
17A04
17A07

×

ベルト

21A01

 

ガーター

21A01

 

セーター

17A01

×

履物

22A01
22A02
22A03

 

 

上記の表から、「被服」と「セーター」を取り消せばよいことが一目瞭然でわかります。

   

(4)他の商標登録も取消す必要があるか

1つの商標登録についてだけ不使用取消審判を請求すればよい場合もありますが、実は複数の商標登録について行わないと、希望する商標を登録させることができない場合があります。

 

希望する商標と類似範囲にある登録商標、出願商標を全て洗い出し、どの商標に対して審判請求すればよいか今一度調べましょう。

 

(5)取消予定の商標はインターネット上で本当に使われていないか

不使用取消審判をするということは、取消予定の商標が使用されていないと一定の確信があることがほとんどです。

 

しかし、カタカナ、ひらがな、英語、漢字などインターネットで網羅的な検索をして、じっくり調べれば実は使用していたこともあります。

 

取消予定の商標がインターネット上で本当に使われていないかを念入りに調べてみましょう。

 

 まとめ

不使用取消審判を請求する前にはもう一度下記のチェックリスト5項目を確認してみましょう!

(1)審判請求日は登録日から3年経過しているか

(2)被請求人が倒産していないか

(3)必要な商品・役務だけを取消し対象にしているか

(4)他の商標登録も取消す必要があるか

(5)取消予定の商標はインターネット上で本当に使われていないか