商標実務のブログ

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あやふやな知識ではもったいない!類似群コードを正確に数えよう

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 1つの区分に商品・役務をできるだけたくさん指定したいですが、

一定の基準を超すと3条1項柱書によって、特許庁から「本当にそんなにたくさん使うんですか〜?」と疑われて使用の証明を求められます。

 

3条1項柱書の拒絶理由は、ホームページ見せたり、簡単な事業計画書(本当に簡単で大丈夫です!)を提出することにより、克服することができます。

しかし、そうすると、費用が無駄にかかっちゃうし、できるだけギリギリのラインを狙って商品を指定したいですよね。

 

では、どうすれば拒絶理由を通知されずに、できるだけ多くの商品を指定することができるのでしょうか。

特許庁の商標審査便覧などに公開されているものから、一つずつ検証していきましょう。

 

第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げ る商標を除き、商標登録を受けることができる。

 

まずは、商標審査便覧41.100.03を開きましょう。 

 

【大原則】類似群コードは7つまで

商品・役務に付されている類似群コードを数えましょう。

原則は、類似群コードが7つまでOKです。8つを超えると3条1項柱書違反となります。

 

原則として、1区分内において、8以上の類似群コード(以下「類似群」という。)にわたる商品又は役務を指定している場合には、商品又は役務の指定が広範な範囲に及んでいるものとして、商標の使用又は使用の意思の確認を行う。

引用:商標審査便覧41.100.03

 

【ルール1】多数の類似群コードがついている商品または役務は、1つとしてカウント

9類の電子出版物は「26A01,26D01」の2つ付されているので、類似群コードは2つになりそうです。

しかし、一つの商品に多数の類似群コードがついている場合は、1つの類似群コードとしてカウントします。

 

ただし、一の商品又は役務で多数の類似群が付与されている商品又は役務であって、他に適当な表示が認められない場合には、その商品又は役務の類似群が2以上であっても、1の類似群として取り扱うものとする。(例:第9類「電子出版物」(26A01,26D01)等)

引用:商標審査便覧41.100.03 

  

【ルール2】包括的概念表示の商品または役務は、1つとしてカウント

25類には、「被服」といういわゆる包括的概念表示(色々な商品・役務が含まれている概念)の商品があります。

被服の類似群コードは、なんと5つ!!!

これでは、一気に5つも類似群コードなくなってしまうのか~!?と思われます。

 

しかし、先ほどの例と同じく、包括概念表示は1つの類似群コードとして扱ってよいため、1つとカウントします!

 

類似群コードがたくさんあるにもかかわらず、1つでいいなんてお得ですね〜!

 

また、「類似商品・役務審査基準」において例示された、いわゆる包括概念表示(例:第25類「被服」(17A01,17A02,17A03,17A04 ,17A07)等)の商品又は役務は、個々の類似群単位に分割して表示することが困難となる場合が多いため、包括概念表示の商品又は役務が2以上の類似群が付与されている商品又は役務であっても、1の類似群として取り扱うものとする。

引用:商標審査便覧41.100.03 

 

25類は下記のような商品が含まれています。

 

被服(17A01・17A02・17A03・17A04・17A07)←1個

ベルト(21A01 )←1個

履物(22A01・22A02・22A03)←1個

仮装用衣服 (24A03)←1個

運動用特殊衣服 (24C01・24C04)

運動用特殊靴 (24C01・24C02・24C04)←1個

 

上記の商品を全て指定すれば、類似群コードは15個あるが、被服、履物、運動用特殊衣服・運動用特殊靴はそれぞれ1つとしてカウントするため、実際には5個としてカウントされます。

 

25類の場合、被服1つしか指定しなかったら、かなりもったいないですねー!ギリギリを狙いましょう!

 

【ルール3】小売等役務は「35K○○」が1つまで

 35類の小売等役務を指定する場合の類似群コードの数え方は特殊です。

小売等役務とは、例えば「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のようなものですね。

 

この小売等役務は、通常、権利範囲がかなり広いですので、2種類以上の「35K○○」がつく類似群コードを持つ役務を指定した場合に、3条1項柱書きに該当します。

 

なお、小売等役務は必ず小売部分と対応する類似群コード「35K○○」と、その商品と対応する類似群コードがついています。

 

(例1)

被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

35K02・17A01・17A02・17A03・17A04・17A07

35K02が小売部分と対応する類似群コード、17A01・17A02・17A03・17A04・17A07がその商品部分と対応する類似群コードです。

 

(例2)

自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

35K04・12A05

35K04が小売部分と対応する類似群コード、12A05がその商品部分と対応する類似群コードです。

 

「35K○○」が2種類以上あれば、3条1項柱書に該当する、と覚えておきましょう!

 

・・・類似する小売等役務の分野を超えて複数の類似群に属する小売等役務を指定してきた場合は、合理的疑義があるともいえるから、その指定役務に係る業務の確認を 行うこととしたものである。・・・・

<例1> 指定された小売等役務が複数の類似群に属する場合

「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供35K04(12A05)」と「二輪自動車の小売又は卸売の業務において 行われる顧客に対する便益の提供 35K05(12A06)」とを同時に指定したとき

 引用:商標審査便覧41.100.03

 

 【ルール4】35K99は個別判断!

どの類似群コードをつけたらよくわからない場合は、「○○○99」という類似群コードがつけられます。

小売等役務の場合は35K99となります。

 

35K99の類似群コードは適当なコードが見つからないために、付与されたコードであるので、指定した小売等役務が類似関係にあるか否かを個別判断する必要があります。

商品部分の類似群コードを見て、商品部分の類似群コードが同一であれば、3条1項柱書に該当しませんが、商品部分の類似群コードが異なっていれば3条1項柱書に該当します

 

なお、類似商品・役務審査基準に例示された小売等役務以外の小売等役務 (35K99)の指定が複数なされた場合においては、類似するものと非類 似のものとが混在する場合が考えられるが、小売等役務に係る小売業等の業務を考慮した上で、相互に類似しない小売等役務群が複数以上あるときは、 上記「(c)類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合。」に含まれるものとして取り扱うものとする。

引用:商標審査便覧41.100.03 

 

これは、審査便覧に示されている例がわかりやすいですね。

 

<例3>
上記(c)に該当する場合

「ヨットの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 35K99(12A01)」と

「グライダーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 35K99(12A02)」とを同時に指定したとき

 

<例4>
上記(c)に該当しない場合

「治療用機械器具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益 の提供 35K99(10D01)」と

「手術用機械器具の小売又は卸売の 業務において行われる顧客に対する便益の提供 35K99(10D01)」 とを同時に指定したとき

 

引用:商標審査便覧41.100.03

 

ヨットの小売:35K99(12A01)

グライダーの小売:35K99(12A02)

→商品部分に対応する類似群コードが12A01と12A02が異なるため、3条1項柱書に該当する

 

治療用機械器具の小売:35K99(10D01)

手術用機械器具の小売:35K99(10D01)

→商品部分に対応する類似群コードが10D01と10D01が同じため、3条1項柱書に該当しない

 

 

まとめ

【大原則】類似群コードは7つまで

【ルール1】多数の類似群コードがついている商品または役務は、1つとしてカウント

【ルール2】包括的概念表示の商品または役務は、1つとしてカウント

【ルール3】小売等役務は「35K○○」が1つまで

【ルール4】35K99は個別判断!

 

3条1項柱書に該当しても、使用の意思を証明することや、実際の使用を証明すれば拒絶理由は解消されることがほとんどです。

しかし、むやみに指定商品・指定役務の範囲を広くしすぎて3条1項柱書に該当させることは、対応費用が発生することや、登録までの審査期間が長くなることから得策とは言えません。

そのため、実務上では類似群コードの数を数えることは意外と重要だったりします。

この機会に是非類似群コードを正確に数えてみてください。

 

おまけ

なお、VBAなどのシステムにあらかじめ指定商品と類似群コードの関係を登録しておき、自動判定させれば、さらに正確に類似群コードを数えることができます。(システム作るのに結構手間はかかりますが・・・)