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商標実務のブログ

日々の商標実務で気付いたことを中心に

4条1項11号の審査基準を実務で役立つところだけまとめたよ~Part2~

類否判断

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前回の記事は商標の類否判断における基礎知識を解説しました。

今回は結合商標の類否判断を解説します。

 

結合商標の称呼の発生方法

6.結合商標の類否は、その結合の強弱の程度を考慮し、例えば、次のように判断する ものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなときは、この限りでない。

 

2単語以上の結合商標の類否判断をする場合は、一連一体にのみ称呼するのか、一部の単語も称呼する(要部抽出する)のかを判断する必要があります。

 

典型例としては、商標「A」と商標「A+B」の類否判断をするときに、商標「A+B」の「A」部分のみを抜き出して判断するかどうかなどです。

 

考え方は様々ありますが、識別力の強弱によって結合の強弱が決まることがあります。

商標「A+B」の「A」部分の識別力と、商標「A+B」のB」部分の識別力強弱の組み合わせを考えたときに、商標「A+B」の「A」部分と「B」部分の結合の強弱以下のようになります。(文字にするとややこしい・・・)

 

識別力の強弱   結合の強弱

弱 + 弱 → (分離しない) (例)SUPER GRIP

 + 弱 → 弱(分離する)  (例)レデイグリーン

弱 +  → 弱(分離する)  (例)スーパーライオン

 +  → ケースバイケース

 

片方が識別力が強く、片方が弱い場合は、原則、要部を抜き出して判断します。どちらも識別力が弱い場合は、結合が強くなり要部を抜き出して判断することは少なくなります(平成14年(行ケ)266号東京高裁平成15年1月21日 「SUPER GRIP事件」)。

特に、識別力弱+識別力弱の結合商標は、「一連一体に読むから非類似ですよね!」と意見書などで反論しやすいので重宝します。

 

実務では

結合商標の各単語の識別力を調べ、その強弱で要部を抽出して判断するか考える。

識別力弱+識別力弱の場合は、一連一体に称呼する可能性あり。

 

 

【参考判決】

「リラ宝塚事件」(昭和38年12月5日 最高裁昭和37年(オ)第953号)

原判決が本願商標の構成部分から「宝塚」なる文字の部分だけを抽出し、 これと引用商標「宝塚」とを対照して、本願商標は右引用商標と称呼、観念において類似すると判断したのは、商標類否判定の法則、実験則に違背するものである、 という。

・・・・

いま本件についてこれをみるのに、本願商標は、第四類石鹸を指定商品とするものであるが、古代ギリシヤで用いられていたというリラと称する抱琴の図形と「宝塚」なる文字との結合からなり、しかも、これに「リラタカラズカ」、「LYRATAKARAZUKA」の文字が添記されているのである。従つて、この商標よりリラ宝塚印なる称呼、観念の生ずることは明らかであり、上告人会社の本願商標作成の企図もここにあつたものと推認するのに十分である。

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「SEIKO EYE事件」(平成5年9月10日 最高裁平成3年 (行ツ) 103号)

「SEIKO」の文字と「EYE」の文字の結合から成る審決引用商標が指定商品である眼鏡に使用された場合には、「SEIKO」の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから、それとの対比において、眼鏡と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字である「EYE」の部分のみからは、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情が認められない限り、出所の識別標識としての称呼、観念は生じず、「SEIKOEYE」全体として若しくは「SEIKO」の部分としてのみ称呼、観念が生じるというべきである。

本願商標

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引用商標

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形容詞的文字(品質表示部分)は識別力が弱い

(1) 形容詞的文字(商品の品質原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されてい ない商標と類似する。


(例) 類似する場合
「 スーパーライオン」と「ライオン」
「銀座小判」 と「小 判」
「レデイグリーン」 と「レデイ」

 

ここは、実務上超重要な項目です。

3条1項3号に該当するような品質表示の単語を含む結合商標の場合は、原則としてその部分は識別力が弱く他の部分が要部として抜き出して判断します。

 

では、品質表示とはどのようなものがあったでしょうか。3条1項3号が参考になります。

 

品質表示の例

  • 品質(スーパー、グリーン)
  • 地名(銀座)
  • 原材料
  • 用途
  • 数量

これらのものは原則、識別力が弱いとして判断しましょう。特に原材料などは、商品・役務によって識別力が変わりますので、注意が必要です。

地名については、販売実績がある地域ほど識別力が弱くなってきます。(商品「茶」について「宇治」部分など)

また、英語1文字部分(商標「L-ron」の「L」部分など)は商品の記号として認識されることもあります。

 

実務では

審査・・・品質表示部分は原則識別力なし!と判断する。

審判・・・品質表示部分は原則識別力なし!だが、総合的に判断してくれるので、品質表示部分があっても一連一体として判断してくれることも。

 

文字の大きさが違えば、それぞれから要部抽出

(2) 大小のある文字からなる商標は、原則として、大きさの相違するそれぞれの部分からなる商標と類似する。

(例) 類似する場合

富士白鳥」と「富士」又は「白鳥」

サンムーン」と「サン」又は「ムーン」

 

結合商標が分離しない条件としては、同書同大同間隔があげられます。

 

同書同大同間隔

 同書・・・同じフォント

 同大・・・同じ大きさの文字

 同間隔・・同じ間隔の文字

 

今回は、そのうち、文字の大きさに関するものです。文字の大きさに一体性がないと、それぞれの部分から分離して判断されます。

そのため、例示された商標から下記のような称呼が発生します。

富士白鳥」  → 「フジハクチョウ」「フジ」「ハクチョウ

サンムーン」 → 「サンムーン」「サン」「ムーン

 

実務では

審査では・・・文字の大きさが違えば、原則要部抽出。

審判では・・・文字の大きさが違っても、全体で一体的であるとすれば一連一体に見てくれることも。

 

間隔が著しくあいていれば、それぞれから要部抽出

(3) 著しく離れた文字の部分からなる商標は、原則として、離れたそれぞれの部分のみからなる商標と類似する。

(例) 類似する場合
「鶴亀  万寿」と「鶴亀」又は「万寿」

 

この項目は、文字の間隔に関するものです。結合商標の文字同士が離れていれば、より分離しやすくなります。これは直感的に理解しやすい項目ですね。

そのため、一連一体にしたい場合は空白がないようにするか、空白があってもその間隔をつめるようにします。なお、間隔をつめるのは画像で出願する場合だけにできるテクニックです。

実際に分離されたくないけど、空白を入れたい場合は「もうちょい空白部分を小さくして、文字の間隔つめれませんか?」と提案するこもあります。

なお、標準文字の場合は、空白1文字程度であれば「著しく離れた文字」としては認定されず、その理由で分離されることはほぼありません。

 

 

実務では

審査・・・著しく離れた文字は、それぞれ要部抽出。標準文字の場合は、空白1文字程度であれば「著しく離れた文字」とはならない。

審判・・・同上

 

 

慣用文字部分は識別力弱い

(5) 指定商品又は指定役務について慣用される文字と他の文字とを結合した商標は、 慣用される文字を除いた部分からなる商標と類似する。

(例) 類似する場合
清酒について「男山富士」と「富士」

清酒について「菊正宗」と「菊」

興行場の座席の手配について「プレイガイドシャトル」と「シャトル」

宿泊施設の提供について「黒潮観光ホテル」と「黒潮

 

3条1項 2号に該当するような慣用文字については、識別力が弱いと判断されます

慣用されるか否かは、その業界でなければわからないことも多いですので、結合商標の各文字部分の意味をしっかり調べることが大事です。

 

なお、慣用されている文字に似ていますが、業界でよく使用されている店舗名なども識別力は弱いとされます。(役務「飲食物の提供」における商標「わっしょい」など)

 

周知商標を含む場合は、原則類似する

(6) 指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と 他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表さ れているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする

ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの等を除 く

(例) 類似する例
テープレコーダについて

SONYLINE」、「SONY LINE」又は「SONY/LINE」と「SONY

化粧品について「ラブロレアル」と「L‘OREAL」「ロレアル

かばん類について「PAOLOGUCCI」と「GUCCI

航空機による輸送について「JALFLOWER」と「JAL

映画の制作について「東宝白梅」と「東宝

 

(例) 類似しない例

金属加工機械器具について「TOSHIHIKO」と「IHI

時計について「アルバイト」と「ALBA/アルバ

遊戯用機械器具について「せがれ」と「セガ

周知商標が含まれる商標は、原則その周知商標と類似します。 通常は、商標「A+B」が一連一体に読める場合は、商標「A」とは非類似になることが多いですが、「A」部分が周知商標の場合は、「B」部分に何が来ても類似と判断する方が安全です。

ただし、「アルバイト」と「アルバ」のように既成語の一部となっているものは除きます。

 

実務では

周知商標が含まれる場合は、類似と判断。

 

 

商号商標はケースバイケース

(7) 商号商標(商号の略称からなる商標を含む。以下同じ。)については、商号の 一部分として通常使用される「株式会社」「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」 「協同組合」等の文字が出願に係る商標の要部である文字の語尾又は語頭のいずれかにあるかを問わず、原則として、これらの文字を除外して商標の類否を判断するものとする

 

商標「ABC株式会社」などいわゆる商号商標の取り扱いについて規定しています。通常は「株式会社」部分は識別力がありませんので、商標「ABC株式会社」と商標「ABC」は類似します。審査基準で示されている「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」 「協同組合」も同様の取り扱いです。

 

ただし、商号商標でも一連一体にのみ称呼するものもあります!

以前、審査官に尋ねると「商号商標は一連一体に称呼しますよ〜」と審査基準とは異なる謎の運用があることを聞きました

また、「実例で見る 商標審査基準の解説」でも下記のように書かれています。

 

なお、本(7)では、商号商標について普通に使用されている業種を表す「化学工業」「機械産業」「商事」「繊維工業」等については言及していないが、業種を表す文字を含む商号商標の類否判断に当たっては、当該業種に係る商品を指定商品とするものについては、前期「株式会社」等と同様に業種を表す文字を除外して商号商標の類否判断を行う実務例と、名称は常に一体的なものとしてみるべきで、前期「株式会社」等のみの文字を除外して類否判断を行う実務例がみられる。

引用:「実例で見る 商標審査基準の解説 第八版」p310

 

 上記の引用している文章はちょっとわかりにくいですが、

「商号商標の中には一連一体にのみ称呼する場合と、株式会社等を省略する場合とどっちもあるよ」

というようなことが書かれています。

 

商号商標を見た場合は、一連一体に読むかどうかは過去の登録例・審決を見て、特許庁が過去にどのように判断したかを追っていくしかありません

ただし、審査基準で示されている「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」 「協同組合」については高確率で省略してもOKです。

 

この項目は審査基準と実際の運用が異なるので、要注意です!

  

実務では

商号商標の場合は、株式会社等の部分が本当に省略するかどうかを併存登録&審決を入念に調べてから類否を判断する!

ただし、審査基準で示されている「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」 「協同組合」などは省略してもOK。

 

商標の中の小さい文字も見逃し厳禁!! 

7.(1) 商標の構成部分中識別力のある部分が識別力のない部分に比較して著しく小さ く表示された場合であっても、識別力のある部分から称呼又は観念を生ずるもの とする。

商標の一部にとても小さく文字が書かれていれば、「まあ文字小さいから考えなくても大丈夫かな〜?」と思いがちです。

しかし、例えば、その文字が「SONY」と書かれていればどうでしょうか。小さく書かれていても需要者は「SONYの商品なんだ、これ」と思うでしょう。

 

つまり、文字が小さくてもその部分が要部になり得るということです。

そのため、文字部分が複数あるような図形商標を依頼された場合は、複数ある全ての文字について類否判断をした方が安全です。

 

実務では

どんな小さな文字でも読めれば要部になり得る!ので、その部分も類否判断しよう。

 

 

色彩の部分から称呼・観念が生じる可能性あり

(2) 商標が色彩を有するときは、その部分から称呼又は観念を生ずることがあるものとする。

上記のように審査基準では書いていますが、こんなことで類似になるのは見たことないんですけど・・・
最近、これで拒絶された人っています??

 

 

識別力ない部分でも、そこが周知商標なら原則類似

(3) 商標の要部が、それ自体は自他商品の識別力を有しないものであっても、使用 により識別力を有するに至った場合は、その部分から称呼を生ずるものとする。

例えば、3条2項に該当の商標や地域団体商標などは、もともとは識別力ありませんでしたが、使用したことにより識別力を有することになりました。そのため、その部分は周知商標と同じように取り扱われます。

 

実務では

3条2項該当の商標又は地域団体商標を含む商標は、その周知商標と原則類似

 

まとめ

  • 識別力弱+識別力弱の場合は、一連一体に称呼する可能性
  • 形容詞的文字(品質表示部分)は識別力が弱い
  • 文字の大きさが違えば、それぞれから要部抽出
  • 間隔が著しくあいていれば、それぞれから要部抽出
  • 周知商標を含む場合は、原則類似する
  • 商号商標はケースバイケース
  • 色彩の部分から称呼・観念が生じる可能性あり
  • 識別力ない部分でも、そこが周知商標なら原則類似

今回は商標「A+B」と商標「A」の類否判断について見ていきました。

結構覚えること多いですよねー。実務やっていると、これらのパターンに当たることがありますので、 その時は審査基準を即座に思い出すと精度の高い類否判断ができます!

 

Part3に続く