読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

商標実務のブログ

日々の商標実務で気付いたことを中心に

商標調査のヒアリングで重要な5つのポイント

ヒアリング

商標調査前にヒアリングを行いますが、このヒアリングが正確にできていないと、商標や商品・役務を正確に特定することができません。

そうすると、その後の出願にも影響が出て、全く意味のない権利になったり抜けや漏れがある権利になる可能性があります。

 

そのため、ヒアリングは商標業務の中で最重要な業務といえます。 

この記事では、ヒアリングで重要な5つのポイントをまとめています。

 

(1)商標を口頭だけで聞かない

商標調査の依頼を受けるときには、事前に、書面やメールなど、文字や図形がわかる形で教えてもらいましょう。

もし口頭だけで商標調査の依頼を受けると、クライアントと自分で思っている商標が異なり調査結果が変わってしまうこともあり、調査をやり直しする場合もあります。

例えば、「アマゾンという商標で調査して」と言われた場合は、下記のように様々な態様が考えられます。

  • Amazon
  • アマゾン
  • アマ・ゾン
  • ロゴのアマゾン

 どの商標を望んでいるのかを明確にするためにも、できるだけ紙かメールの形でもらいましょう。

 

 

(2)他に使用している者がいるかを聞く 

他社が商標を使用しているかどうかの情報は重要です。それによって、3つの判断が大きく変わります。

  • 商標出願を急ぐかどうかの判断
  • 識別力の判断
  • 早期審査時に商品を減縮せずに済むかの判断

以下に説明していきます。

 

(2−1)商標出願を急ぐかどうかの判断が変わる

クライアントによって調査報告などの納期をバラバラにするべきではないですが、唯一他社が使用している場合は、超特急で調査・出願すべきです。  

 

僕は実際に1日違いの出願を経験しました。クライアントはタッチの差で負けました。

「たった1日頑張って早く調査していれば・・・出願していれば・・・」と後悔があります。

 

他社が使用している場合は、その会社も商標出願を検討している可能性が高いです。

そのため、1日の違いが商標登録ができるかを分ける重要な違いになり得ます。

後悔しないためにも、他社が使用していれば、超特急で調査・出願しましょう

 

(2−2)識別力の判断が変わる

他社が使用していれば、その商標は識別力を失います。

例えば、飲食店で商標「わっしょい」は識別力はあると思うでしょうか?

普通は識別力あるように感じますが、審決例では「わっしょい」は皆が使っているから識別力なしと判断されています。

識別力を適切に判断するためにも、他社が商標を使用しているかどうかの情報を得ることは重要です。

 

【参考審決例】不服2014-25553 

・・・・飲食物の提供に係る分野においては、店舗の名称に多数用いられているから、本願商標の構成中の「わっしょい」の文字部分は、その指定役務との関係において、自他役務を識別する機能を果たし得ないか、又は弱いものというべきである

引用:不服2014-25553 

shohyo.shinketsu.jp

 

(2−3)早期審査時に「商品を減縮せずに済むか」の判断が変わる

早期審査の条件としては、通常は現在使用している商品のみで出願する必要がありますが、第三者が使用している場合は、使用している商品のみに限らなくてよいとされています。(「権利化について緊急性を要する出願」と言います)

そうすると、早期審査で審査期間が短くなるのに、通常の出願と同様に権利範囲を広く取得することができ、とても有利になります。

 

www.jpo.go.jp

 

 

このように他に使用している者がいるかどうかによって、様々な判断が変わります。

 

 

(3)主力商品・サービスを聞く

販売している商品が多岐にわたる場合は、どの商品・サービスを優先して権利を確保するのか検討する必要があります。

主力商品の権利が既に他社に取得されている場合は、不使用取消審判や商標変更が必要になりますが、あまり重要ではない商品であれば、その部分を削って出願することによって一定の権利を得ることができます。

他社に先に取られた商品は販売しないようにすれば、基本的には問題になりません。

 

主力商品・サービスが何であるかによって、調査後のアドバイスが変わるため、主力商品・サービスを聞いておくことは重要です。

 

 

(4)他にこういう商品・サービスやってませんか?と聞く

ここは商標弁理士腕の見せ所です。

クライアントが気付いていないが、実は取得しておくべき商品・サービスがあります。

例えば、クライアントが次のように説明してきた場合は、どの区分が最適でしょうか?

 

「アプリ作ってます!」

 

この場合は、9類「電子計算機用プログラム」、42類「電子計算機用プログラムの提供」などが想定されます。

 

「カレーの飲食店しています!」

 

この場合は、43類「飲食物の提供」が想定されます。

 

しかし、本当にこの区分だけで、クライアントのビジネスが十分に守れるでしょうか?

 

不安な場合は、そのビジネスと関連が深い商品・サービスの権利が必要かをヒアリングしましょう。

  

「アプリ作ってます!」

→広告収入も目指しますか?

 

広告収入もあれば、35類「インターネット上の広告スペースの貸与」など

 

「カレーの飲食店しています!」

→カレーのテイクアウトもありますか?

 

テイクアウトがあれば、30類「調理済カレーライス」など

  

商標の場合は、ビジネスモデルに興味を持つことが非常に重要です。このビジネスはどういう風に儲けてるのかな〜と考えることにより商品・サービスの提案力が変わってきます。

 

 

(5)何か疑問点はありませんか?と聞く

積極的なクライアントであれば、ヒアリング中に質問をガンガンしてきますが、そこまで積極的でないクライアントの場合はまだ不明な点が残っていることがあります。

そんなときは、

 

「何か疑問点はありませんか?」

 

と聞いてあげましょう。

 

もしかしたら、何か引っかかっていることがあり、それが重要なことかもしれません。また、疑問点を解消することで顧客満足度を上げることにもつながります

 

 

まとめ

商標調査のヒアリングでは下記の5つのポイントが重要です。

  • 商標を口頭だけで聞かない
  • 他に使用している者がいるかを聞く
  • 主力商品・サービスを聞く
  • 他にこういう商品・サービスやってませんか?と聞く
  • 何か疑問点はありませんか?と聞く

全て網羅できなくても、このうちの少しでも意識することにより、よりレベルの高いヒアリングをすることができます。